suztomoの日記

To be a good software engineer

論語と算盤

ろんごとそろばん。5年後の一万円札の表に載る渋沢栄一による講演を数ページで1つのエッセイになるようまとめもの。本の中では大正2年で74歳とでてくる程度には渋沢栄一の後年の講演だろう。印象に残った箇所の読書メモ。


孔子による中国の古典論語と、商売(算盤)は遠くて近いもの。論語が人生と商売のバイブルである。


人物の観察法。視(外見)、観(その動機)、察(その人の安心はいずれにあるや、その人は何に満足しているのか)。行為と動機と満足する点の三拍子が正しい人を作る。


渋沢栄一が官僚を辞めた原因は日本の改善すべき点が商売にあったから。


時期を待つの要あり。すぐに争わず待つのも大切。自身もすぐに争いたいものは官尊民卑である。官がいかに不都合なことを働いても看過されてしまう一方、民間ものは簡単に処罰される。


大丈夫の試練石。逆境には自然的逆境(幕府の命をうけてフランスに行って帰ってきたら幕府がなくなってたり)と人為的逆境がある。前者の場合は天命だと思い屈せず勉強するといい。前者の場合は反省して悪い点を改める。


得意時代と失意時代。調子にのるな。小事も大事と同じように扱うこと。


勇猛心の養成法。まず体を鍛えること。特に下腹部を鍛えると動じにくくなる。次に心を鍛える。読書や先人の話を聞く。暴慢ではいけない。


常識とはいかなるものか。知恵と情愛と意思。どれかがかけると問題をきたす。


習慣の感染性と伝播力。良い習慣(早起き、読書など)は良い結果をもたらす。少年時代に読んだ本や歴史、習慣は老いるまで頭に残る。老いたとしてもいつでも習慣は改められるものである。


人生は努力にあり。常に勉強する習慣をつけよ。怠惰からは怠惰しか生まれない。知識だけではなく実行しないといけない。


真正の利殖法。利殖とは資金を効率的に使い利子や配当で増やすこと。中国の宋は空理空論で利欲(利益を得ようという欲望)がない世の中を作ろうとしたが国は滅びた。一方で自分だけ良ければよいという考えでもダメである。


富豪と徳義上の義務。儲けさせてもらっているのは社会のおかげという考えで、社会の救済や公共事業を率先して尽くす。


人格の標準はいかん。人の価値は何で決まるのであろうか。価値に差異などないという論理もあるが、その価値はその富ではなくこの世に尽くす精神と効果によるべきだ。


修養は理論ではない。実際に行わなければ知恵があっても駄目である。


仁にあたっては師を譲らず。キリスト教儒教の比較。人々を統べる王が横暴をしていた時に生まれたキリスト教は権利思想がある。問答を記録した論語には権利思想は表立って現れないが、仁(西洋で言う所の愛)にあたっては師を譲らず、という言葉に権利思想が見られる。


ただ王道あるのみ。雇用主と労働者の関係は従来は家族のよう曖昧なものであった。法律でルールを定めて権利義務を主張したたけでは良い効果は出ない。双方が事業の利害得失が共通である心をもって真の調和を得られる。


競争の善意や悪意。毎日人より早く起き、善い工夫をなし、知恵と勉強をもって他人に打ち克つのはよい競争。評判が良いからと他人の真似をするのは悪い競争である。悪い競争はいづれ損失を出す。平時の道徳を重んじよ。時間を守るのも道徳。譲るのも道徳。安心を与えるのも道徳。業種にかかわらず自己の商売に勉強は飽くまでせねばならぬ。

 

孝は強うべきものにあらず。親孝行は強いるものではない。親の言う通りにならないくても親孝行な人はいる。渋沢栄一の父も彼の才覚を見て自由にさせてやったので、親不孝者にならなかった。無理にさせていては逆だったかもしれない。


現代教育の得失。昔は良い先生を得るのに苦労した。今は学校があるが生徒は先生を尊敬していない。良い師を探せ。学問のための学問ではなく成したいことを考えてから高校、大学に進め。


偉人とその母。偉人には良い賢母を持つ者が多い。しかし江戸時代に行われてきた中国のを元にする女子教育は消極的に"慎ましくあれ"といったようなものだった。女子も男子同様に国を形作る一分子である。女性を活用するには知識を与える教育が必要だ。


孝らしからぬ孝。近江の有名な親孝行者が信濃の親孝行者を学びに訪ねる。しかし信濃の者は母親に足を揉ませたり食事を用意してもらったりする。近江の者が問うと、"親孝行は親孝行と思ってしてはいけない。自然に任せて世話好きな母の思うようにさせてあげるのが真の親孝行である"、と。


成敗と運命。知識を得て挑戦し失敗することもある。運命はわからない。成功とか失敗とかよりも、より大切な道理を見るべき。人は誠実に努力して運命を開拓せよ。失敗したら自己の智力が及ばぬためと諦め、また成功したら知恵が活用されたとせよ。敗れても飽くまで勉強すればいつか幸運に再開するだろう。