イノベーションのジレンマの著者Clayton M. Christensenが亡くなって、関連する本をお勧めするtaroleoさんのおすすめより。自分が図書館から借りたのはStephen Wunkerらが著者の緑の本。
さらにJobs To Be Done (ジョブ理論, Competing Against Luck)も合わせて読むと、実際に破壊的イノベーションをデザインしていくための考え方がわかるのでおすすめhttps://t.co/20Mlt94VNp https://t.co/rRPc6lIsGO
— Taro L. Saito (@taroleo) 2020年1月27日
なぜ良い商品が作れないのか?時間がないから?。Jobs Roadmapは厳しい質問をする。マーケットリサーチは架空の役に立たない質問をする。人々は自分達の判断をサポートするデータを使う。イノベーションのジレンマ。
Jobs Roadmapというフレームワークを使えば良い商品が作れる。戦略、といっても内容や作り方は十人十色。この本では戦略を作る時の考えを一つ一つ解説する。複数人で話し合う時にこの本をベースにすると集中した議論ができそう。
Part Ⅰ. Understanding Jobs to be Done
人々は何か(Job)を成し遂げようとして行動する。映画を観に行ったり、タクシーに乗ったりするのはその背後に子供を楽しませたいとか、移動したいというJobがある。
1 Jobs
Jobは顧客が成し遂げたい仕事。
Jobは顧客が欲しいと言うものではない。
2 Job drivers
Jobをどう解決するするかは顧客によって異なる。
- Attitudes. 社会的や他者からのプレッシャー。個性。
- Background. 文化。地理。
- Circumstance. 天気。仕事のスケジュール。突然の用事。
Planet Fitnessは軽い運動をする人をターゲットにして成功した。顧客のat titudeはマッチョから邪魔になってる雰囲気があった。
3 Current Approaches and Pain Points
料理を作って食べるにも色々なステップがあり、それぞれpain pointsがありうる。買う時、作る時、食べる時、洗う時、なと。
ケロッグがシリアルと牛乳をセットにして売ったら失敗した。顧客がシリアルと牛乳を揃えないといけないpain pointとして見たが、実際それは「いままでの習慣を変えるほどには」大した痛さではなかった。
4 Success criteria
顧客にとってjobの成功とは何か。多くあって欲しいもの(ゴミがたくさん取れる)と少なくあって欲しいもの(燃料、手数料、時間)。
Value through tradeoff. MSNBCは視聴者がタレントではなくコメントを観たいというのを知ったのでテレビ出演経験が少ないがラジオなどで良い政治コメントができる人を出演させた。費用がかかるファクトチェックもしない。このお陰で1視聴者ごとの費用は抑えつつ視聴率2位になった。
Colgate Wisp (使い捨て歯ブラシ)は外出用使い捨て歯ブラシ。歯のゴミが取れるか、爽快感、速さ、うがい不要、がユーザの成功の計り。
5 Obstacles
Inertia. 惰性。良いものを作ったとしても顧客がいままでの事から乗り換えるのを待つだけではいけない。
Gen Zeは電動スクーター。顧客は車より安いからこれに乗るのではなく、環境に優しいというstatementのために乗る。
Obstacles to adoption. 試してもらう障害の種類
- Lack of knowledge. 自分達がいかに困っているか、無駄をしているか気づいていない。
- Behavior change requirement. 現金ばかり使っている人がクレジットカード払いをするハードルの高さ。
- Multiple decision makers. 病院のオンラインシステムは役に立つが、IT部門や他の医者に相談しないといけない。
- High cost. $40,000のダイヤモンドのナイフ、£29のインスタントラーメンは高すぎて試す人もいない。携帯電話のキャリアのtermination feeが壁。それを負担する戦略。
- High risk. 特許訴訟保険加入者が増えないのは、それに入るとパテントトロールの目にとまってしまい、補償上限を超える訴訟をおこされるリスクがあるから。
- Unfamiliar category.
Obstacles to use. 最初にちょっと使ってから使うのを辞めてしまうという障壁。
- Limited supporting infrastructure. 電気自動車を買うときは給電ステーションが大切。
- Use creates pain points. 使い方が複雑すぎる。
- Offering isn’t targeted. セグウェイは画期的な商品だったが対象ユーザが不定であった。一般ユーザに販売を辞めて、警察、ツアーガイド、倉庫にフォーカスして成功した。
とある小売り業とのプロジェクトでAmazonは敵であった。しかし、Amazonにより顧客はその店の商品をオンラインで買う障壁を下げてくれていた。他の商品とadd-onで買うことによりその種の商品を日常的に買うものだという考えを広めてくれた。Amazonの値段は安い。この値段に対抗できるようにするために配送の効率化が進んだ。
6 Value
顧客にとって何円の価値があるのか。Cost-plus pricingで価格を決めるのが主流だが、顧客が払ってくれる価値に注目するvalue-based pricingのも良い。
5つのポイント
- Switching cost. 顧客に製品を使ってもらうのはどれだけ大変か。
- Revenue stability. 収入を得るのに新しい顧客を獲得しないといけないか。
- Differentiation. 差別化。
- Cost structure. 顧客が増えればコストが安くなるか。
- Scalability. ビジネスを拡大するにあたってどんなインフラが必要か。
Hersheyは自社のお菓子の51%の顧客は大人だと知った。フルーツが入った健康的なチョコレートなどを買収して成功。
Turning your value proposition into business model. 事前にメニューを決めて前払いしてもらうレストランTasting Counter. 無駄が少ない。ファイナンシングができる。
Golden Friendsというブランドは高齢化社会の韓国を観察して、捨てられる下着や歩きやすい靴を販売して成功した。
値段設定の章なのに値段設定の事例がない。。。
7 Competition
Oreoのマーケティング部門はOreoがimpulse-purchase、他のお菓子とは違うのだと知っていた。レジに並んでいる時に近くの棚にあるOreoの競合になるのはスマホの画面。
Traditional competition view. Trader Joeの陳列方法は業界の今までの考えでは非効率だった。開いた冷蔵庫、その上にある関係のない商品。しかしその当たり前を疑わないと新興企業に市場を取られる。
裕福層をターゲットにしてきたインテリアデザイン業界。料金が高いのが当たり前だった。Decor Aidは家具業者と提携し、デザインの過程を効率的にするソフトウェアで値段を下げた。この会社は1部屋だけなどといった注文も受けられる。
Kraftは自分の好みの匂いがする水MiOを立ち上げて成功した。自分の好きな水を作りたいjobなんでどこで見つけるのか。
ナイキを買う人は自己表現をしたいから買う事が多い。これまでの戦略はアスリートとの契約やCM。NikeiDは自分のデザインしたシューズを買えるもの。”Express your identity”
Competing against non-consumption. まだ使われてないタイプの商品。なぜまだ使われてないのか。他に似た商売はないから、と販売側が言う時、だいたいそれは3つのグループに分けられる。
- 領域が狭い。火曜日に子どもむけのDVDを売る商売は他に似たものはないかもしれないが、競合(映画館とか)は沢山ある。
- とある市場ではユニークな商売だが他の国では既に成功しているもの。
- 本当にユニークなもの。往々にして新しい技術による。他の技術が追いついていないため解決できるjobがない。MicrosoftがテレビでネットができるMSN TVを作った時まだスマートTVがなくインターネットも遅かった。
一見競合に見えないAsymmetric competitorの説明をしたが、traditional competitorの分析ももちろん必要。
- advantages in delivering against key jobs and success criteria
- Flexibility to adjust plans. 大企業は動きが遅いというのがスタートアップの大きな利点。
- 競合のmarketplace perception. 新興企業の商品にFUD (fear, uncertainty, and doubt)を抱かせる戦略を大企業は取るかもしれない。
Part Ⅱ. Using Jobs to be Done to Build Great Ideas
Making success repeatable.
全社員がイノベーションを起こしていい組織、特定の部門だけに注力する組織などいろんな形態がある。失敗するのは決まったプロセスを持っていないもの。
イノベーションというからには型にはまらないイメージがあるが、むしろイノベーションのプロセスという型を作るべきと説く。
往々にして素晴らしいアイデアはテスト期間に厳しい意見を向けられる。ブラウン管でない平面テレビ。
8 Establish Objectives
5つの"D".
ステップ1. (define) Objectiveを立てる。Objectiveの例。定量的、定性的。例えば"5年で○○の売り上げを20%増やす"や"新しい○○を市場に出す"など。
ステップ2. (decide) How and with whom you will win. 3つの軸で考える
- 商品の知識。前に似たものを作った事がある。
- 顧客のことの知識。以前の顧客と同じか、場所/タイプが異なるか。
- 商売の知識。コストを減らしたり、エコシステムを作ったり。
Marvelのコアはキャラクターと話。これの周りに映画化やNetflixのDaredevil、Marvel Digital Unlimitedでの定期購読を行い成功した。
ステップ3. (determine) 強みは何か。
ステップ4. (defeat) 障害は何か書き出す。
ステップ5. (develop) 成長のための選択肢。もし困難があっても選択肢を事前に考えておけば冷静になれる。
案を出して理想的、現実的、無理、の3つに分ける。シンプルなビジネスプランを練る。
9 Plan Your Approach
Primary research. Big dataはどれが売れているか伝えてくれるが、コンテキストを伝えられない。なぜその商品が買われているのか。
10 Generate Ideas
AirTran Airway's CM showing wrong brainstorming.
なぜブレインストーミング(ideation)をしてるのか?アイデアをどう評価するのか?どれだけ荒っぽいアイデアでいいか?
枠を決めるのは大切。
まずは各人が議論なしでアイデアを書き出す。そのあと偏らないように人をグループに分ける。
アイデアをグループにまとめる。
アイデア出しとその後のorganizationとprioritizationの間にランチを挟むとアイデアを客観的にみられて良い。
11 Reframe Your Perspective
部門や会社の外の知識を取り入れてイノベーションを起こす。なるべく属人化せず会社の仕組みとしてやる。
Open innovation. 部門の外の人、エキスパート、顧客とを繋ぐ機会を定期的に作る。3Mでは新商品に7つの新しい技術を使った。元の部門の知識は2個だけ。残りの5つは部門をまたぐ交流で集められた。
バイアスに気を付けろ。"That’s how we’ve always done it", "We tried it before and it didn’t work."
Impact of trends. インターネットやスマートフォンの流れ。Mariottはスマホで近所のレストランを顧客が見つける流れを見つけた。近所のレストランと協力してホテルの外もホテルのエコシステムとした。
12 Experiment and Iterate
よくわからない事は常にあるので、実験してみる。仮のウェブサイトを設置して幾つかの宣伝コピーを試してみるとか。この項は前に読んだ本”The Right It”が詳しい。
皆車のブレーキの効きは重要と言うが車を買う際にブレーキを決め手にする人はいない。
Bringing customers into design process. 何を欲しがったか、何が多すぎたか。質問。ユーザからの新たなアイデア。
Afterword: Institutionalizing Jobs to be Done Thinking
Cognizantという社員2万人のB2Bの会社でJob理論を当てはめたケース。5つの柱。
- 即効性。Account managerが持っている問題を小さなグループで解いた。
- 偉い人からのサポート。CIOに推してもらった。
- ワークショップ後のコミュニティ作り。share insight, questions, success stories.
- Internal experts. Learners becomes leaders. 社外の人たちが言っていることよりも社内の人が言うことのほうが聞きやすい。
- Build momentum organically. 自社の中で段位のようなものを設定し、一番上の人が著者達と一緒に講師をやれるようにする。
ところで、日本で有名な「ジョブ理論」は"Competing Against Luck: The Story of Innovation and Customer Choice" (著者はClayton M Christensenら)という本の翻訳だった。自分が読んでいたのは違う著者の本だった。