suztomoの日記

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Investing in Patents: Everything Startup Investors Need to Know About Patents

Krajec, Russell. Investing in Patents: Everything Startup Investors Need to Know About Patents

自分が特許に興味を持っているのでQuoraで馬田さんに聞いたら教えてくれた答えから。

qr.ae

知財弁護士の著者の視点でスタートアップがどのようにして特許や弁護士を活用していくべきかを説明している本。特許は商売の方針な合っていないといけない。良い特許は、その侵害を簡単に見分けられないといけない。良い特許はinvestment-grade patentと呼ばれる。今の自分には関係のない世界だが、なんとなくふわふわしていた特許というものが商売の世界でどう役にたつか、どこに落とし穴があるか具体例を通じて理解できた。

Introduction: The Patent System Is Broken -- Or Is It?

Patent extortion: when an enforcer holds up an alleged infringer for less than the price of a lawsuit. Whether the patent is valid or not never enters into the picture.

このPatent extortionが流行ったのでわざと誰も理解できないような難解な言葉で書かれるpatent applicationが増えた。Patent attorneyは数百万円手に入り、Patent extortionを実行する人は何億円も手に入った。

Patent attorney/investorの利益相反。A patent attorney faces huge liability when giving any types of business advice. これの影響と弁護士はStartup CEOに恐れられるので、弁護士の言うことを聞くだけで意味のない特許を無駄に時間をかけてしまう悲劇がおこる。

  • Technology Risk: その特許は実現可能なのか。
  • Market Risk: その特許を使った商品を欲しがる人達はいるのか。

Appleが持つslide to unlockの特許は技術的に簡単で、ボタンがないスマートフォンをロック解除するのにとても役に立つ。

1 Making The Business Case For A Patent

1.3.2 Patents Only Have Value When They Can Be Enforced

特許を使っていることがわからないといけない。殆どのソフトウェア特許保有者が侵害を見つけられないため役に立たない。例: Gloriously complex and innovative artificial intelligence. Tropicana's orange juice patentの項目46に"1 percent by weight of a stored orange juice"とある。これはstored orange juiceかどうかサンプルとってもわからない。なのでこの特許は役に立たない。熱湯で形を作るスキーブーツがあったとして、熱湯を注ぐのは消費者。会社が消費者を訴えられるかというとそうでないので、この特許も役に立たない。

家の通信用に箱を外に置く装置の特許をもつ製造業の会社があった。特許を侵害してるのは競合ではなく顧客のcable network operator. 顧客を訴えるわけにはいかない。ただこの特許を持つ会社が精算され、別の利害関係のない会社に特許が移され、その会社は特許を使ってけcable network operatorを訴えた。

ちょっとした文言の変更がinfringerを競合から外してしまうことになる。

1.3.4 Good Patents are Written From The Claims

商品は特許の一つの形に過ぎない。発明者は商品を書きたくなるが、良い特許はlegal definition of the inventionから書き始める。

1.4 Tradeoffs and Considerations for Patents

Patentはその約20年間を通じて平均$56kの費用がかかる。

大きな弁護士事務所はスタートアップには向かない。パートナーが相手をしてても実務は新人がやる。小さい会社の方がいい。ただ技術を理解してよい特許を書くのは大変なので、急かされたりより重要な顧客がいる場合は良くない。

Quid Pro Quo. (ラテン語で何かの為の何か。等価交換) 特許の申請をすると企業秘密を曝すことになる。コカコーラのレシピやカーネルサンダースのハーブとスパイスは秘密なので特許にしてない。

Provisional patent applicationという本物の特許申請の一年前にやっていい安いやつがある。すぐに特許がほしいスタートアップでこれをやるのはだいたい間違い。薬の特許の効果は後が大きいので製薬会社がやる方法。

アメリカでは公開後1年以内なら特許を申請していい。ヨーロッパは駄目。

1.8 Own or Rent? Enclusive Licenses

大学やPatent Finance Companyが特許を貸してくれる。スタートアップにしてはexclusive licenseの方がpatentを所有するよりも良い。

Aligned incentive: licensee and licensor have aligned incentives.

3 Managing Process

多くの特許申請はWishful Thinking Patentsである。これはとある製品をそのまま特許にしようして、どの部分が特許になるかはっきりしない申請。例えばアイスクリーム自動生成機を作って、その一部に量りがついていてそれをそのまま買いてしまうと、その量りがないものは特許侵害とできない。4章のDesign around analysisを参照。

3つの早道。普通は3-7年かかるところをSpecial Statusにすることで9-12ヶ月に。

  • Patent Prosecution Highway (1番良い)
  • Track One (全体の部分のうち2つの部分だけ速くなる)
  • Accelerated Examination (使わない)

Patent Prosecution HighwayにするにはPatent Coorperation Treaty (PCT) applicationを申請する。3-6ヶ月でできる。

3.5 Roadmap for a Startup's Portofolio

Prophetic patentsは未来予測する特許。この初期の特許申請は具体的すぎなくてよく、fundingや商品を市場に出す前に行われる。(rejectも仕方ない)市場調査か実験のあとの申請をdata-driven patentという。

3.5.2 Know What is Protected and What is Not

特許は説明に効力はない。Clain(日本語でもクレーム)のみ効力があるので、説明に無駄なことを書くことは他の人に企業秘密を無料で明かしているようなもの。

3.5.3 Where to Look for the Next Batch of Patents

製品そのものよりも、製品を作るのに必要な技術で特許を取った方が良い。

更新費用が3.5, 7.5, 11.5年後にかかる。この時が特許を捨てるか考える良い時期。

3.5.6 Selling on the Secondary Patent Market

秘密の特許売買セカンダリマーケットが存在する。良く書けていて役に立つ特許がやり取りされる。このマーケットでは大手の買い手はブローカーを使って名前を隠す。特に有名企業は隠さないと色々な特許の値段が高くなる。

このマーケットでは特許がevidence of use (infringement is impolite here)付きで売ってる。これがないとブローカーは興味を見せない。

3.6 Quirks of the Attorney/Client Relationship

Don’t ask the barber whether if you need a haircut.

“特許弁護士が良い特許と悪い特許を見分けるのはどうやっているのか? それはきちんとお金が払われるかどうかだ"

特許弁護士はタクシーのようなものだ。どんなお客さんが来ても断らずにその人の行きたい所へ連れて行かねばならない。ただ、競合する可能性がある顧客がいる場合は断る。

クライアントは往々にして彼らが特許製造マシンの一部であることを忘れる。クライアントからしたら人生やキャリアが掛かった大事な案件だが、弁護士からしたらいくつもある案件のうちの一つでしかない。

良い弁護士を選ぶ方法は、別の弁護士にその人の作った特許を見てもらい"Is this patent enforceable?”, “Where is the weakness in this patent?”, “What would you do differently?” などと見定めてもらうこと。人の良さでは測れない。

Fiduciary Duty. 弁護士はビジネスに関する助言をしない。いくつか選択肢を与えて顧客に選ばせる。当たらなかった場合に訴えられてしまうから。

Divided Interest. 弁護士の顧客は会社。弁護士が話すのは発明者。あれこれいう発明者を弁護士が宥める。時々言う通り申請したあとに内容を変える。

Attorney's business experience. USPTOに特許を申請できる弁護士は少ないので仕事が多く、ビジネスのことを知らないことが多い。なので顧客が特許がビジネスに役立つと責任を持つべき。

Patent Infringement Opinion Letter. 弁護士が責任を回避するために作る文書。大抵、検査はしてない。判例法が変わるかもしれない、裁判官、陪審員の見方による、という曖昧なもの。

4 Due Diligence On Startups

特許の利用(新規のも買ったのも借りたのも)に何か問題はないか。ちゃんと実装できるのか。

Assignments. Mechanism to transfer the title of a patent. Recorded in USPTO. Assignmentが存在することはUSPTOのウェブサイトで見られるが、その内容はUSPTOオフィスに行かないと見られない。

Chain of title. 発明した人から今保有してる人までの歴史。一つ一つにlicense agreementがある。金融商品や担保にされている特許も存在する。

No assignments. Assignmentが空の場合に、特許が誰かに割り当てられたのにその人がUSPTOに登録してない場合がある。

Inventorship. 発明者のリストが間違っていると特許は無効。例えば貢献がないのにせっかくだからと言って多くの名前を入れておくとあとでそのうちの1人が真実を言うことで特許が無効になる。特許を軸にしたM&Aが失敗するかも。

スタートアップ・アクセレレレータプログラムかの会社の特許は価値が半減する。なぜならそういう会社は巨大な部屋で他の会社の人と雑談しながら発明をするのであとで別の会社の人が発明者リストに入ってないと訴えられやすい。これを防ぐために"transfer agreement at the beginning of accelerator program”がある。例: BlueIron Good Neighbor Agreement:

blueironip.com

従業員はもちろん創業者もpatents and proprietary information agreementにサインするべき。

4.2 Good Patents are Easy to Read

難解な特許は買い手、借り手にも読めない。

良い特許は段落ごとの明解なtopic sentence, 簡潔な文構造, 出来る限り能動態で構成される。

悪い文は弁護士は技術を理解しなくても良いという間違った考えから産まれる。特許を読むのは弁護士でない普通の人。技術者、裁判官、陪審員

4.3 References Cited

5個だけ参考文献があるものは20-100あるものよりInter Partes Reexamination (IPR) reversalに弱い。IPRは特許を、"もし審査官がこれを知っていたら特許はなかっただろう"という文献を示して無効にするプロセス。発明者のリストに間違いがあるとか、Prior artが見つかる等。

弾かれるのが怖くて他の人の文献をたくさん載せない人もいるが、間違い。審査官が多くの文献を見た特許はIPRに対して強いので後で価値が出る。

ただ、関係のない文献を数多く載せることで自動計算される特許の価値を高く見せようとする方法を使ってる人もいる。

4.4 Invention Rating Checklist

Detectability, noveltyなどの項目のチェックりすと。

Noveltyは新規性。白か黒なのでわかりやすいが、Non-obviousnessは難しい。

The applicant must have a convincing story for the examiner to show unexpected results or some kind of “ah-ha” moment.

例えば何故か赤色だとうまくいくこととか。業界はではXが主流だが、発明はYを使う。コンピュータで自動化する事で発見できる何かがあるとか。

Actor analysis. 特許に登場する人は誰か。顧客が侵害しうるような特許は意味がない。例えば足の形状に熱でフィットさせて使うシューズのインナー。この"method-of-use" claimで特許を取ったとしても侵害するのは顧客。Product claimでやると良い。前のインナーの例はプラスチックでできていてある一定の温度で形がかわる、靴の形をしたもの。

ソフトウェアはユーザだったりデバイスだったりサーバだったりするからActorが多い。細かく書きすぎず、claimには"receives input from user"が良い。

取り替え式髭剃りもactorが多いので特許を役に立たせにくい。それよりも取り付け口の形状の特許(刃と柄それぞれ)のほうが役に立つ。

Design Around Analysis. 常に別のやり方が存在する。技術的な問題を他の方法で解く場合にどれだけ手間がかかるか、提案手法が何倍economic valueがあるか分析する。

4.5 Patent Searching

Use Cooperative Patent Classification (CPC) system. Googleの検索もある。

AcclaimIPという特許専門検索(有料)は過去の所有者情報も載せてくれる。

4.6 How to do Valuation Analysis

特許の価値は25% of gross margin of a product protected by the patent.

5 Conclusion

この本に書いてある事を利用して特許を上手く使ってビジネスができるといいね。

おまけ1: BlueIron IP

著者の会社はベンチャー投資もやっていて出資した会社は無料で特許まわりの面倒を見てもらえる。よい特許への目利きが上手いのでよく他の投資家から投資話を持ちかけられる。

おまけ2: What Every Business Executive and In-House Attorney Should Know About Obtaining and Using Patent Opinions

By Mathew D. Thayne.

Patent opinionというのがどういうものが気になったのでインターネットで調べたらでてきた文書。

侵害してると知りながら特許を侵害して負けると補償額が3倍になる。Patent opinionは知っててやっていなかったと証明する防御策となる。

Patent opinionは特許弁護士が作る3種類の文書

Non-infringement opinions 自分(会社)がある特許を侵害していないという文書。誰かからdemand letterを受け取った時に使う。 Invalidity opinions 他人の特許が無効であるという文書 Clearance opinions 自分の製品が他の特許に被らないという文書

Patentが無効である事を裁判所に訴える時に事前にちゃんと調査する事が必要で、patent opinionはその十分条件である。