suztomoの日記

To be a good software engineer

Never Split The Difference

Mediumの記事"4 Books Everyone in Tech Should Read and Why"で紹介されていた交渉の本らしい。人質交渉のエキスパートが解説する交渉術の本。ハーバード流の交渉の本は理性的な人同士なら役に立つが、人質交渉は日々の中では人間は理性的ではなく感情に動かされる。この行動経済学からも学んび、感情を利用して交渉を進める方法が解説されている。

"I'm sorry, Richard. How am I supposed to do that?” ゴリ押ししてくる相手に暖かさを見せる。こっちの問題を相手に考えさせる。

1 The New Rules

アメリカで頻発した人質事件でFBIは考えを改める。

フロリダで犯人Giffeが人質を解放しようとした時にFBIが我慢しきれずにエンジンに発砲してしまい人質2人死亡、犯人自殺。のちに遺族による訴訟Downs v.s. United States case。

1992年にはIdahoでRandy WeaverによるRuby Ridge farmの事件。1993年にはWaco, TXでDavid Koresh’s Branch Davidian compoundの事件。

ニューヨーク市警察が交渉専門の部署を作ったのをはじめにFBIにも部署ができた。

ハーバードでは感情が理性を克服し、相手の欲しいものを理解することでwin-winの交渉ができるという考え(本 Getting to Yes)があった。一方で経済学者Amos Tverskyと心理学者Daniel Kahnemanは人間は理性的でないという論を出してのちにノーベル賞を受賞。

誘拐犯はGetting to Yesが使えるような理性的な思考はしない。ちなみにサブタイトルのNever split the differenceは人質交渉では全員救出以外は失敗だから。

2 Be A Mirror

時間は交渉にとって味方である。急いでいるような話し方だとラポートを築きにくいし、相手は話を聞いてくれていないと感じる。

Late-night FM DJ's downward-inflecting voice. 低くてゆっくりの声。相手の話を聞きやすい。肯定文で質問文のようにさせない。"Joe is gone. You're talking to me now." 契約交渉に使える。

アクティブで笑顔のような声。これは一緒に問題解決をしたいときの声。相手は頭を速く動かす。値段交渉に効く。

Mirroring. 同じ動作をする人は信頼される。FBIの人質交渉では、大拙な3つの言葉を言葉を繰り返すこと。

3 Don’t Feel Their Pain, Label It

感情(特に怒り)は交渉の邪魔だが、ネガティブな感情を無視してはいけない。

相手の気持ちをIt seems you like ..., It sounds you don’t want to...の形で表現する。大体肯定文。

It seems that you think you get shot if you open the door. It seems that you don’t want to go to jail.

と相手の感情の裏にあるものを説明することで相手が落ち着く。Labelをした後は沈黙すると相手が喋りだす。"そのシャツ気に入ってるみたいだね"と言ったら相手はどこで買ったかを話したくなる。

授業で前に出てきて欲しい場合に「前に出てくると大変なことになります。ただ1番学べます。」と、手をあげる恐怖を説明する。前の人が

飛行機の遅延で前の人がスタッフに怒鳴った後に感情を説明するエンパシーを伝える。"随分焦っていたお客さんでしたね", "大荒れですか" "そうですか、全部埋まってますか。"

Accusation auditとは相手が言う可能性のある非難の言葉を並べてその時どう言うかを考えること。自分は頭の中でよくやる。先にちょっと誇張したぐらいのものを言うことで相手がそれを言いにくくする。

Labelして沈黙。

4 Beware "Yes" - Master "No"

電話の営業マンがYesを言わせるような誘導尋問をしてくる。"Do you like clear water?" しかしYesというのは往々にしてmaybeのような意味のない返事である。Yesと言わせる質問をしても相手をイライラさせるだけ。

“No” is affirmation of autonomy. Noという言葉は話してる人に拒否権がある、コントロールできるという安心感を与える。Noという言葉を拒否と受け取らない。

  • まだ同意できない
  • 不快だ
  • 分からない。
  • それをする余裕はない
  • 別のものが欲しい
  • もっと情報が欲しい
  • 別の人と話したい

で、"What about this doesn't work for you?" "What would you need to make it work?" "It seems something here that bothers you." (+沈黙)

Yesにも複数の種類がある。偽物のYes, 確認のYes, CommittmentのYes。偽物のYesは相手が会話から抜け出したいから言うもの。最後のが1番大切。

"Is now a bad time to talk?" と聞くと"Yes, it's a bad time"で改めて時間をくれるか、"No, it's not"で会話を始められる。

Noを引き出す話し方。"Do you feel that if things stay the way they are, America's best days are ahead of it?" "Are you going to sit and watch President Obama take the White House in November without putting up a fight?"

あえて相手の考えを間違えて説明して聞いてみる。"It seems you are eager to leave your job."と言われたら、"No,"と答えたくなる。

5 Trigger The Two Words That Immediately Transform Any Negotiation

"That's right"という言葉を引き出せように相手のことを理解して言葉にする。自分の考えと反するものでも相手の目線で理解する。同意する必要はない。

"You're right"では相手は動かない。病気になった人が医者にアドバイスされて、はいはい、っていうのだけれど実際に行動に移す人は少ない。(これも交渉) 時には本人も"That's right"な時がくるまで自分の行動の理由が分かっていない時もある。

6 Bend Their Reality

Fairなんてものは人の心の中にしかない。Unfairだと言えば値引きしてくれる人もいれば、"fairじゃないと感じたらいつでも言ってください"なんていく言葉で信じてしまう人もいる。

“We’ve given you a fair offer.” は相手を心象操作するために言う言葉。言われたら"Fair?"と聞き返す。

給与交渉では一つの数字ではなくレンジを言う。

お金以外の事を交渉で話すようにすると最終的にお金が増える。例えば有給休暇の数とか。雑誌の特集とか。

10で割り切れない数字は考えに考えた結果出たもののように聞こえる。$5,000ではなく$4,751。

採用面接の時に"What does it take to be successful here?"という質問は良い。誰かがアドバイス(guidance)をあげると、それらを守ってるか確かめたくなる。

相手満足するようなオファーを出せない時は最初にaccusation auditで期待値を下げて、相手が自分のことを悪く言えない様にする。”By the time we get off the phone, you’re going to think I’m a lousy businessman.” そして相手が損するような言い方をする。"Still, I wanted to bring this opportunity to you, before I took it to someone else."

7 Create The Illusion of Control

FBIのやり方は相手と対立するという前提があった。著者は相手がこちらを助けてあげている気持ちにさせるほうが良いと気づいた。

人質の声を聞かせてほしい、というお願いをすると誘拐犯に貸を作ることになる。"初めて飼った犬の名前は?"のような質問は警察っぽくて相手をイライラさせる。聞くべきはopen-ended questionなのだけど、相手に自分のやって欲しいことを念頭に入れて少し作為を入れた質問。"How can I know he’s safe?” Howの質問は聞き手が助けたくなる。

  • “How am I supposed to do that?” を"お前が悪いんだからこうしろ"の代わりに使う。
  • "Why did you do that?" を "What caused you to do that?" に。
  • 上司が一度承認したトレーニングに付いてゴチャゴチャ言ってきたら “What did you have in mind when you approved this?” (著者曰くこれは上司のパワーを見せつけたいだけ)

8 Guarantee Execution

“Yes”という言葉はHowが付随していなければ意味がない。”No”というのではなく、”How can I...”の質問をして相手に考えてもらう。“How will we know we’re on track?” “How will we address things if we find we’re off track?” 自分の納得いくものだったらそれを復唱し”That’s right”を言ってもらう。

もし”You’re right”や”I’ll try”と言う言葉が相手から出てきたらそれは失敗している。

身代金を払った後の誘拐犯が人質を解放しない場合をどう防ぐか。失敗した件では誘拐犯動詞でイザコザが起こったのが原因であった。一般に1人の人間(CEOでもFBIでも)が取引を反故にする可能性がある。

Howの質問を繰り返すことで誘拐犯側がさまざまな議論をしなければならなくなり、彼らの意思統一が行われる。話者の向こうにいる人達の事を考えてする質問の例:

“How does this affect he rest of your team?” “How on board are the people not on this call?” “What do your colleagues see as their main challenges in this area?”

Yesと言っても実行してくれるとは限らない。同じテーマでYesを3回言ってもらう。相手の言葉が完全に納得してなさそうならば理由を聞く。

三人称の人を出すと人は嘘を言いやすいらしい。人質交渉の時の"We"は本当そうだけど、"The other guys"は嘘っぽい。

9 Bargain Hard

自分の欲しい値段の65, 85, 95%で用意する。相手の欲しい値段ではない。

細かい数字は信憑性が増す。

10 Find the Black Swan

交渉で相手の言葉の裏に交渉を左右する3つの重要な事実(Black Swan; unknown unknown)が隠れていると思っておく。

相手の信じるものを理解する。マーケット、エキスパート、神、社会だったりする。それらは彼らにとって彼ら個人の考えよりも強い。自分が知っている分野ならばその言葉を使う事で相手は理解されていると感じる。

It’s not crazy. It’s a clue. 自分たちの考えに当てはまらない物はcrazyだと片付けてしまう事がよくある。それらはBlack Swanを見つける手がかりである。

本音を言う衝突は避けてはならない。同僚や家族との関係を作る糧となる。