suztomoの日記

To be a good software engineer

Misbehaving - the making of behavioral economics

著者Richard H. Thalerは既存の経済学が人々の行動を説明できないことに気づき行動経済学という分野を、他の学者を巻き込んで開拓した。この本は筆者の視点で行動経済学がどう生まれてきたかを書く。その時既存の経済学者にされた反論やその反論も紹介する。行動経済学はいくつかの国の政府で役立っている。非合理な人間の考えや行動が沢山の紹介されてる。非合理な行動の中に法則性を見いだす。

Daniel Kahneman曰く著者は怠惰(lazy)である。怠惰であるが故に本当に面白い事のみに集中する。

著者はこの本の出版後の2017年にノーベル経済学賞を受賞。ユーモアが上手。

Beginnings 1970-78

Supposedly Irrelevant Factors

70点が平均で生徒が難しすぎると文句を言っていたので137点満点にしたら文句がなくなった。成績の付け方は変わらないのに。

経済学者が考えるモデルは人間をEconで置き換えた世界。Cold-blooded optimizers.

  1. 何か選択肢をとってもそれが最善かはわからない。スーパーには何万もの商品がある。
  2. 人にはバイアスがある。
  3. Econの世界には関係ないはずのことリストがある。Supposedly irreldvant factors (SIF). 記念日のプレゼントや現金でないプレゼント。

現実世界の人間の行動をより正確にとらえるために、心理学や社会学を取り入れた行動経済学(behvioral economics)の分野ができた。政府やビジネスに使われている。

The Endowment Effect

具体的な顔の見える子どもの病気の募金集めは統計的数字によるものより沢山集まる。

著者が大学院だった頃。危険な職業と安全な職業を比べて人々が感じている命の値段を計算した。保険のアクチュアリーの父にデータで助けて貰う。結果の"The Value of Saving a Life"は政府に使われている。7 million/life.

次の2つは理論的には同じ値段になるはずだが、人々は後者の値段をとても高く見る。 - 1/1000の確率で死ぬ病を直すのにいくら払うか。 - 1/1000の確率で死ぬ治験は幾らなら参加するか。

Endowment effect. 既に手に入れている自分の物の価値が、これから手に入る(かもしれない)ものの価値より高く感じてしまう現象。

The List

経済学では説明できないことを沢山リストにしてみた。

1976年にBaruch FischhoffとPaul Slovicに会う。BaruchからDaniel KahnemanとAmos Tverskyの事を聞く。Baruchのhindsight biasの論文は人々は予期してなかったのに予期していたと思う傾向がある。"俺は最初からこのプロジェクトの問題を知ってた"となる。この傾向を他人に見出す。

Availability. Dhruvという名前はよくあるかという問い。(アメリカで聞けば)そうではないという答えが多い。実際にはインドでは多く。地球規模で見たらDhruvは多い。

Bounded rationality. Herbert Simon曰く人間の問題解決能力は足りてない。

Value Theory

Prospect Theoryとも言う. これまでは人は合理的な行動をするものとして捉えられてきた。経済学の理論は合理的な解(normative theory)を求めるものだった。

Princeton UniversityのJohn von Neumannによるexpected utility theory. AよりBが好きで、BよりCが好きならば、AよりCを選ぶべき、という基本から始まる。当たり前なんだけど投資の意思決定の基礎。

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Value Functionのグラフ

このグラフでEndowment effectが説明できる。自分が持ってる$100のワインが無くなってしまうことの喪失感は$100のワインが手に入る"入手感"より大きい。

Just noticeable diffeience (JND). Weber-Fechner Law. 大きいものの脇にある小さなものは気にならない。車のヘッドライトが同時に消えた。そんなのありうる?実は一つ既に消えてたけど気づかなかったのでは。同じ$10引きでも$45のラジオと$495では前者の方が得な気がする。

Gainに関してはrisk averseなのにlossに関してはrisk-seeking.

California Dreamin'

1977年の秋にStanfordでDaniel KahnemanとTverskyと議論ができた。Danielとは丘で話した。お互いの分野に興味を持ったので。

心理学者は被験者に質問をする実験をする。経済学は人間や政府がやったことを研究する。

The Gauntlet

Gauntletは中世の甲冑のこと。既存の経済学者の反対意見にGauntletの呼ぶことにした。

As if. Richard Lesterはこれまでのmarginal analysis(企業は利益を最大化する計画を立てる)に疑問を唱えた。実際には経営者やマネージャは利益ではなく売上の最大化を狙っているし、誰も売る量の増加が値段に作用するなんて考えてない。

Fritz Machlupはmarginal analysisは人々が"言った"ことではなく、知らなくても結果的に知っているかのような行動を取ることにあるのだと言った。ただし裏付けるデータはなし。

Prospect theoryやThe Listの場合は理想と全然違う行動をとってるのだからas ifでは片付けられない。

経済学者は数学的証明を好み、アンケート調査を嫌う。雇用統計もアンケートだし、出口調査もちゃんとやれればとても正確な値を出すのに。

Incentives. 掛け金が少ないから実験では人々は正確な答えを出さないという反論。二つの物事に対して聞き方によって好きな物が逆転する現象(preference reversal)がある。実際はお金の量を増やして実験したら悪化した。

Learning. 実験では人々は見たこともない問いのあたるので人々は合理的な答えを出さないが、それを繰り返せばきっと人々は学ぶだろうという反論。安いスーパーマーケットの買い物と高い家だったとしたら何回も買ってるスーパーマーケットのほうが理性的だろうと思うが、実際はスーパーマーケットでも人々は理性的でない。実はこれはIncentivesの反論と矛盾してる。

Markets. ダメな人もMarketに入ればアダムスミスの見えざる手のようにちゃんと行動するだろうという反論。これをいう人はいつも手を動かす(handwave)。しかしマーケットで非理性的な行動をしてもそれを治すような罰はない。お腹いっぱいになってしまって、オーダーしちゃったからとデザートを食べる。ちょっと太るだけで、その行動を是正しようという力はない。

Mental Accounting 1979-85

人間の頭の中のお金の感じ方。

Bargains and Rip-offs

砂浜でビールを買ってきてもらう。何ドル以下なら買うというルール。結果、高級ホテルと酒屋で答える金額が異なる。

Acquisition utilityはこれまでの経済学のconsumer surplus(払っていい価格と実際の価格の差)と同じ。Econsはこれだけ考えている。

Transaction utilityは普通払うであろう値段(reference price)と実際の値段の差。差が正の数ならbargainsで負の数ならrip-off.

Macy’sとJC Pennyはクーポンや割引が分かりにくくて良くないので価格設定を割引しない「マトモ」なやり方に変えたら売上が減った。これでJC PennyのCEOは退任。

Sunk Costs

Sunk cost fallacy. 払ってしまった物は使っても使わなくてもお金は戻ってこない。けれども人々はそのものを頑張って使おうとする。たとえutilityがマイナスでも。例えばテニスで肘を痛めても既に購入した会員権を使おうとする。ベトナム戦争も大きなコストを払ったので引くに引けなくなった。

ワイン雑誌でのアンケート。$20で買ったワインが成熟して$75のマーケットの値段になった。あなたがこのワインを飲むコストはいくらか。25%が-55(得をしてる)と回答。30%が(もうコストは払ったので)無料と答えた。Econsからしたら機会損失で$75なのに。‘{

別の調査では$400でワインの箱を買って10年待つ。これは「消費」「投資」「節約」のどれか?投資と答える人が多数。ワイン業界は消費をカモフラージュできるので上手。Vacation time-shareも投資を謳って消費者に買ってもらおうとしている。旅行の消費を投資とカモフラージュしてる。Amazon PrimeCostcoの年会費も同じ。

Buckets and Budgets

大きな組織で予算が部門ごとに分けられる。部門のラベルなどSIFなのに予算が足りずに緊急な必要で困ることがある。ラベルの予算内でやりくりしようとする。

2008年にガソリンの値段が安くなった。浮いたお金は他の物に使ってもいいはずだが、ハイオクを買う量が14倍理論値より多かった。ガソリン代が浮いた分をガソリンに使いたい心理が働いた。

At the Poker Table

ポーカーで負けてると一発逆転を狙いたくなる。買ってるとよりギャンブルしたくなる。"gambling with the house's money"はカジノを出るまではお金は自分の物ではないので、普段自分のお金ではやらないような賭けをカジノではしてしまう。

Self-control 1975-88

レストランでカシューナッツを下げられるとホッとする。もっと食べてしまうから。Econsは選択肢が減ってしまっただけだと言うだろう。

喫煙者はタバコを1箱づつ買う。ダイエットしてる人はアイスを冷蔵庫に入れない。まだ作業中の論文を会議に出してやる気を出す。

Willpower? No problem

Adam Smithが1776年に出したThe Wealth of Nationsは経済学の基礎を築いた。経済学者George Stigler曰く経済学に新しいものは何もない。すべてAdam Smithが言ったことだ、と。

SmithのThe Theory of Moral Sentiments (1759)ではself-controlを近視的なpassionと"impartial spectator"の対立だと書いた。10年後の幸せは今日の幸せよりとても小さい。

22歳のPaul Samuelson (16才でシカゴ大学。そのあとHarvardで博士)が数学を経済学に適用する。"A Note on the Measurement of Utility"はこれまで曖昧だけど最大化しないといけなかったUtility (hapiness, satisfaction)を数学で扱う論文。

ケインズによる税金が$1000安くなったらそのうちどれだけを消費に回すのか?という問い。Marginal propensity to consume (MPC).

Milton FriedmanはMPCは三年に分けて消費されるという"優れた"モデルを作る。Franco Modiglianiは更に一生の効果があると説いた。Robert Barroは子供や孫の世代まであり、一時的な税金軽減はいつか反動があるのでMPCはないと言った。このようにモデルは数学的にどんどん優れていくのだが、現実の人々の行動と乖離していった。

著者とHersh Shefrinはbehavioral life-cycle hypothesiswを発表。カジノで得た$1000とretirement fundが得た$1000をどう使うかの差に注目した。後者はMPCが負になったこともある。つまりよりretirememt fundで貯蓄しようと行動した人達がいた。

Planners and Doers

長期的な視点を持ってる自分の中の人格(planner)と目の前の欲を満たしてしまおうとする人格(doer)が対立しているという考え方。

Diminishing marginal utility. 最初の一口が1番美味しくてその後は段々喜びが減ってくこと。

β and δ modelというのを唱えている人達もいる。これは数学的にシンプルな特徴を持つ。

Interlude

Misbehaving in the Real World

ニューヨーク州北部のGreek Peakスキー場の財務回復。

ゆっくり値上げ。

お客さんがrip-offされてると思わないように色んな策をした。1シーズン数千ドルしか稼いでいないレースコースを無料にした。(スキー中に1ドル財布から出すのは面倒でしょう)

学生向けに6枚セット券。地元民のために40%オフ(high transaction utility)。10月までに購入。天気(雪/気温)によらずに収入を得られて12月にお金を借りる必要がなくなった。

計測してみると、40%オフで買った人の券の6割しか使われていなかった。つまり実質全額払っているのと同じだった。使わなかった人が次の年も使いたいというお願いをしてきたが、これは今年度も回数券を買ったら前年のあまりを有効にしますということにした。お客さんは喜んだが、昨年使わなかったひとは今年も全部は使わないだろう。いかなかった人は自分を責めるがスキー場は責めない。

雪が足りなくてリフトが少ない時は割引をしていた。しかしスキー場に全額払うつもりで来ている人に割引をしても効果がない。より効率的にするために次回に使える割引券を一緒に配ることにした。

車会社による値下げ印象競争。$300ドルの値下げよりも$300ドルのキャッシュバックのほうが効果が高い。本当は後者の方が消費税分損しているのに。さらにGMは車のローンの金利を低くする作戦を出した。実はキャッシュバックのほうが得なのにもかかわらず。GMに招かれて言ってみると実はなんとなくでやった施策で、なぜこんなに効果があるか測らなかったそう。大企業よりも小さなスキー場のほうが観察と分析をしている。

What Seems Fair?

大雪が降った次の日にスコップ値段をあげるのはunfairに見られる。MBAの学生はこれを需要と供給だと見てEconsのようにunfairと見ない。シカゴの銀行がATMを使って欲しい銀行が$3の窓口手数料を追加したら新聞で批判された。コカコーラが晴れの日に値上げする自動販売機を作ったらバッシングに合った。

業績が悪い時、Econsが社長ならば従業員の給料を下げる。実際はリストラする場合が多い。給料を下げるのはunfairに見られるから。0%のインフレのとき5%の給与下げるのと、7%のインフレの時2%しか給料を上げないのは一緒なのに後者は批判されにくい。

Mugs

マグカップを幾らで売るか実験。被験者は数分前に貰ったマグカップにもendowment effectを感じた。これはinertiaに通じる。人々は特に理由がなければ現状維持を好む。Status quo biasとも呼ばれる。

1990年の論文発表のあと多くの経済学者や心理学者がマグカップを使って実験した。

Engaging with the Economic Profession 1986-94

シカゴでRationalist対Behavioralistのカンファレンスがあった。

600人いて病気にかかっている。200人を確実に助ける方法が1/3の確率でみんな助かる方法か。

カンファレンスの最後はBehavioralist側なのかRationalist側なのかよくわからない話で終わった。

Anomalies

Thomas Kuhn曰く科学の革命はこれまでの知識で説明できないことがたくさん出てきた時に起こる。天動説から地動説とか。

Rationalist経済学では説明できないことをJournal of Economic Perspectivesに4年間四半期に1回書いた。論文にはならないけど経済学者の読者が5000人も読んでくれて良いメディアだった。

https://www.aeaweb.org/journals/jep で読める。

Forming a Team

Eric Wannerと著者が有名なopen-mindedな心理学者と経済学者を集めた会をやったが実りはなかった。

EricはRoundtable基金を用意した。これを使って2週間の大学院生向けプログラムを組んだ。優秀な学生が集まり後に様々な大学の要職に就いた。2週間で優秀にしたのではなく、優秀な人に行動経済学の興味を持たせた。

参加者Sendhil Mullainathanは後にIdea42という行動経済学のNonprofit think tankを作った。

Narrow Framing on the Upper East Side

マネジメント論を始める。

Inside view and outside view. プロジェクトがどれだけかかるかの予測。内部の人は楽観的で外部の人(他の似たものと比べて)は長く掛かるだろうと読む。

とある出版社の23の雑誌の編集長。1/2で$2 mm profitで1/2で$0.5 mmなプロジェクトは遂行すべきか?編集長達それぞれは20人否定。CEOは全てやるべきと。この乖離はインセンティブ設計にある。このような投資はプールにまとめてパッケージとして扱うと良い。

製薬会社のプライシングプロジェクト。会社全体では小さなお金だが、1マネージャーの予算ではリスキーすぎるのでプロジェクトは行われなかった。

これらはprincipal-agent problem. 組織全体の事ではなく、自分自身の"保身"(welfare)の為に意思決定がなされた例。

著者はこのような例を"dumb principal problem"と呼ぶ。これを防ぐには結果ではなく、意思決定がなされた時にあった情報のみを用いて評価されねばならない。

PhD studentのShlomo Benartziとの仕事はequity premium puzzle. 安全な債券とリスキーな株券の利回りの違い。平均して6%だが、本当の差は幾らか。

Myopic loss aversion. 1/2で$200勝ち、1/2で$100負けるゲーム。経済学の歴史学者Carey Brownは問われて曰くやらない、と。でもこれを100回やるならやる、と。

Retirement savingで毎月の成果レポートを昨年のレポートに変えたら株を買う人が増えた。Equity premiumが理論値よりとても高いのは人々がポートフォリオを頻繁に見すぎるから。(logicがよくわからん)

ニューヨークのタクシーの運転手は12時間働くか、一定額稼ぐまで働く人が多い。これは賃金が高くなると労働量が増えるのと反対。運転手は1日の枠に囚われて全体に適した意思決定をしていない。家に帰った時"今日は稼げないから早く帰ってきた"って言う運転手は妻に良くは思われない。(妻が経済学者でなければ。)

Finance 1983-2003

The Beauty Contest

"price is right" proposition. 会社の真の価値は株価に入っている。ただ誰も真の価値なんてわからない。

"no free lunch" proposition. 全ての公開情報は株価に織り込み済みなので、株の売買で利益を上げる事はできない。Michael Jensenの博士論文でファンドマネージャーの利回りは平均並みと調査された。

0から100の中で平均を取ってその2/3に1番近い人が勝つゲーム。Financial Timesでやったら13になった。ナッシュ均衡(その手をみんなが取ったらもう誰も手を変えたくならない手)は0。13は理論値0と離れている。Does the Stock Market Overreact?

Benjamin Grahamによる本Security Analysisはvalue investingを説く。Price/earning ratio (P/E). 1980年には古い考え。株価がいつ真の値に戻るかは誰もわからない。

著者らは安い株(Loser stock)が高い株よりパフォーマンスがいいことを観測し発表した。

The Price Is Not Right

1996年にBob ShillerとJohn Campbellが株価が高すぎる、とFRBに警告を与えたが、実際に下がるのはその四年後の2000。4年は長すぎる。

著者はBob Shillerとbehavioral financeのワークショップを1991年に始めた。多くの論文が発表された。

The Battle of Closed-End Funds

Closed-end fundは株とかが後ろにある。その株の値段とファンドの値段が一致しない。高い時や安い時。多くのお客さんは個人投資家。彼らのsentimentが良い時はdiscountが減り。悪い時は増える。

巨大な機関投資家に比べて個人投資家は小さい会社の株を買う傾向がある。Closed-end mutual fundのdiscountと小規模な会社の株価の推移は関係があるという論文を出した。

この論文はJournal of Financeに載った。伝統的経済学者のMerton Millerは反論する論文を書いた。4回もやったので多くの経済学者が元の論文を読むことになった。

Fruit Flies, Icebergs, and Negative Stock Prices

3ComPalmの株式を持ってた。Palmの価値が3Comの価値より高く、Palmの利益の出てるビジネスが$-23 billionと計算されてることになる。

これは氷山の一角だと著者は思ってるが、Gene Famaはこれはごく一部のエラーでEMHには影響がないと考える人もいる。

規制する人たちがEfficient Market Hypothesisを信じていると、何も行動せずに住宅価格バブルのようなことが起こる。

Welcome to Chicago 1995-present

Chicagoのbehavioral science groupに行った。心理学者が主なグループ。

Merton Miller didn’t block him, saying “because each generation has got to make its own mistake.”

Law Schooling

Ronald CoarseのCoarse Theorem. 最も高いお金を払う人が資源を使うべき。例えば寮で音楽をしたい人と静かに勉強したい人の対立は、寮の部屋という資源にお金を高く払う人が使うべきで、片方が片方に払えば解決する。 しかし、Ultimatum Gameで見たように、人間は取引がフェアじゃなければ受け入れない。著者の家の木が隣の家に迷惑をかけてる。著者は気を抜く$1000を払いたくない。Coarse Theoremに従って隣の家に行って"$1000払いませんか?"って聞いたら交渉決裂。 このワークショップがきっかけで行動経済学と法律を交えて議論するきっかけになった。

“Oxford Handbook of Behavioral Economics and Law” by Zamir and Teichman 講義をしてくれないかとの話がくる。法律には詳しくなかったので協力者を探す。

Football

NFLの1999年のドラフト。ドラフトは指名順(pick)を交換できる。New Oleans SaintsのコーチDitkaはRicky Williamsをとても欲しかった。でも12番目。その年の残りドラフト全部と、次の年の1, 3ラウンドを交換にした。結局1999年は下から2位に。Ditkaはクビになった。

The false consensus effect. 自分と同じ事を他の人が考えてるだろうという症状。、iPhoneを持ってる人は他の人もiPhone持ってるだろうという思い込み。

NFLにはChartというpickの相対価値のテーブルがあった。また、NFLは予算が決められていたので限られた中で良い人を集めなければならない。

早いpickはコストがかかる。他のpickと交換できたかもしれないopportunity costと、高い給料をはらわないといけないcost.

高い選手を手に入れてしまうとsunk costを無視できない人の性質で良くないのにも関わらず試合に出したくなる。

選手のPerformanceの計算方法。ドラフトで獲得した選手は契約期間が終わるとフリーエージェントになってmarket valueの価値になる。選手と同じポジションで同じ成績のmarket valueの人の年俸を足したものがその選手のパフォーマンスの金額。

Present bias. 今のpickが来年のpickより136%も高い。賢いチームはこれを利用して良い取引をしていた。

Limits to arbitrage. その論文を知っていても行動を変える事はできない。

Dumb principal problem. 監督やコーチは成績が良くないと首になるので今勝ちたい。しかし、往々にしてオーナーも今勝ちたいと思ってるのでシンプルでない。

Becker conjecture: 皆んながEconsのように慣れなくても、10%がそうならばその理性的な考えが必要な良い仕事に着くだろう。しかしNFLのオーナーのDraftのやり方を見ると彼らは理性的ではない。

3つのNFLのチームを見てきたが、理性的に行動してもらうようアドバイスをするのはとても難しい。

Helping Out 2004-Present

Behavioral Economicsの主な2つのトピックはanomalyを観察すること(empirical)と理論を作ること。著者は第3の道を考え始める。Behavioral economicsで世の中を良くできないか。

Save More Tomorrow

アメリカ人は貯蓄が苦手。これまでの経済学者の考えでは人々は必要十分な貯蓄をしてからリタイアするものだった。401kをopt-offにする(デフォルトでon)などの提案をした。

Going Public

Libertarian paternalism. 人々が達成したい事を選択肢を残しつつ助けてあげる主義。一般の人向けに"Nudge"という本を書いた。

Influence choices in a way that will make choosers better off, as judged by themselves.

Nudgeは小さいけど人人の意思決定を助けるもの。トイレの便器のハエの絵は80%綺麗にした。

"The Design of Everyday Things"がNudgeの作り方を考えるのに役立った。Choice architecture. 良い商品を考えるのとよい公共政策を考えるのは似ている。

臓器移植の意思表示をopt-inにするかopt-outにするか。opt-outの方がもちろん"同意"している人は多いのだが、いざ脳死になると家族にいちいち聞いて回らないといけなくなっている。本人が本当に同意していたかわからないから。

アメリカでやってるように運転免許証更新の時に聞くのが良い。聞いてすぐに記録する。80%が同意。Mandated choiceと呼ばれることもある。ただ無理に答えなければNoになるので、著者はこれを"Prompted Choice"と呼ぶ。人間を相手にするので言葉は大切だ。

Nudging in U.K.

イギリスのConservative Party (Tories)の人達がNudgeを気に入ってくれた。Behavioral Insight Team (BIT)を作った。政府の色んな組織に行動経済学を適用する。それぞれの組織に問題を設定してもらうのが良かった。

人々に期限内に税金を払ってもらうにはどうすればいいのか。他の人も払ってますよ、と説明する。(ただし本当ならば)実験してみると、大多数の人は税金を払っている事とあたなは払っていない少数派であることを合わせたメッセージが1番強かった。

BITのマントラ:

  1. 何かを人にやってもらいたかったらまずそれを簡単にせよ
  2. Evidence-based policy needs evidence. ランダムサンプルに対して実験するべき

行動経済学を利用したプロジェクトの3つの成功の秘訣:

  1. 主催者が問題解決が世の中のためだと知ってる
  2. 多数の人々がそれを解決したいと思ってる
  3. 簡単な方法が存在する(one-click intervention)

Nudgeは隠れてなくてもいい。シンプルなテキストメッセージも有効。Ghanaでの実験ではテキストメッセージが薬の飲み忘れ防止に有効で、短いのが1番よかった。

BITは独立した組織として政府に関わっている。

アメリカでもMaya ShankarがSocial and Behavioral Science Team (SBST)を最初6人で始めた。退役軍人のベネフィットが使われてることや学資ローンの返済などがテーマ。

Nudge for good. 政府やビジネスはNudgeを自身の為だけに使うことがあり、人が被害を被ることがある。

What is Next?

本当の人間や会社からデータをとって政策を決めるべき。

教育の政策の効果は経済学者にはまだよくわかってない。

観察。こうあるべきという論ではなく人間を観察せよ。

データを集める。ストーリーも良いけど自分や他人を納得させるにはデータが必要。

声を上げる。何かがおかしい時はそう言うことで悲惨な結果を防げる。

良い職場環境は数字をベースに人を恐れずに議論ができる所。意思決定の手順で評価がなされるべきで、結果は関係ない。