suztomoの日記

To be a good software engineer

Humankind

勝間さんに紹介されていたのでNYPLで物理本を借りた。

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Humankind

katsumakazuyo.hatenablog.com

人は本質的に助け合うものである。特に危機に際して人々は思いやりを持ち強くつながり合う。これを前提とした制度設計をすれば今までに非効率な無駄が省けるかもしれない。最近読んでいた行動経済学の本の内容やNonviolent Communicationなどがストーリーを持って纏められている。

Prologue

第二次世界大戦では空爆によって家を焼かれた人たちはより強固な気持ちで国を支えることになった。これはイギリスでも反対のドイツでも見られた事だった。民間への空爆をしたことにより逆に戦車や戦闘機の生産性が10倍以上になったとの報告がされた。

Veneer theory. 人間は薄い板の中に自分本位なら考えを持っているという考え。A cynical view of humankind.この本とは反対の考え。

Part 1 The Statue of Naturer

Homo puppy

犬が狼から飼い犬に変化してきたのと同じように人間も可愛く小さくなってきたのではないか。ネアンデルタール人の方が力があって大きかったがそれはいなくなってしまった。ら

ハリケーンKatrinaの時にもNew Oleansでは問題は本当は無かった。警察が誤って無実の人たちを殺してしまったことはあった。自然災害が起きるとエリートや権力者は普通の人が自分本位な考えて動いて混乱が起きる、と思い込んでしまい、大量の軍や警察を呼び第二の混乱が起きる。

イースター島は昔は森だったが、今は草原。人が西暦900年頃に移住した時は木材が沢山あり、それらを道具にしてモアイ像を建造出来た。1.5万人が住んでいたと予測された。ところが木の資源がなくなり船が作れなくなり魚が獲れなくなった。Long-ear部族とShort-ear部族が対立し、1680年あたりにLong-ear部族を滅ぼしてしまったという言い伝えがある。ヨーロッパ人Jacob Roggeveenがイースター島に1722年に着いた頃には2000人程度まで減ってしまっていた。 しかし、考古学社が骨を見たら戦争の後は無かったし、彼らが持っていた武器も戦争用には非力なものだった。農耕の技術が合ったので木を切ったぐらいでは生産性は減らないと分かった。ヨーロッパ人がイースター等の人達を野蛮だと形容したとされていたが、出典を探ってみるとこのイースター島の住民の野蛮はThor Heyerdahlが作り上げた物だった。彼はイースター島の創作を書いてベストセラーになった人。むしろイースター島の1番の問題はヨーロッパの奴隷船とそれに伴って運ばれてきた病気(small pox)であった。

Part 2 After Auschwitz

人が善良な人ばかりならばなぜホロコーストが起こったのか?なぜ

人は与えられた役割によって残虐になるというStanfordの監獄実験は有名だが、実験の設定に不備があった。その後BBCが似たてれびばんぐを作ったが、普通の人を監獄ごっこをさせても何も起こらずつまらなかった。

人はいい事をしていると思って騙されて悪い事をしてしまう。傍目から見たら明らかな悪行でも本人は良いと思っている事が多い。

Part 3 Why good people turn bad

Empathy(共感)は良いものとされているが、自分と似たものに対して良い感情を持つことはそれ以外の人に対して冷酷になると言うことである。Empathyとxenophobia (自分と違う人を嫌うこと)はコインの裏表なのである。第二次世界大戦のドイツ人の原動力になったのは自分達が被害者であるという絆である。

近代の戦争では人を直接斬りつけることは稀で、遠隔から爆弾や銃撃で攻撃する。相手が人であるという共感を生みにくいの。指揮官などはその際たるもの。

人は根から善良だというのに、なぜヒトラーのような悪い指揮官を選んでしまうのか。Leadership BS似たテーマ。

より良い集団行動をするためにかわいさを発達させてきた我々Homo Puppyは「恥」を感じる事ができる唯一の種である。恥は権力者が自分を律する力になりうるが、往々にして権力を持つものは「恥を知らない」(shameless)。CEOにはサイコパスな人が多い((普通では1%のところ5%)。

Part 4 A new realism

The power of intrinsic motivation

Extrinsic incentives bias. 自分以外の他の人はモチベーションが無い、お金や罰で操作しないといけないという考え。

Edward Deciによる実験ではパズルを解く人にお金を与えたら能力が落ちた。実際に、お金を貰わずとも人々は山に登ったり子供を産んだりボランティアをしたりする。保育園のピックアップが遅れたら罰金としても遅れる人が増えた事例。お金を払ってしまえば良いのかと思わせてしまった。

Jos de Blokは2006年にヘルスケア事業Buurtzorgを立ち上げて、マネージャーのない組織を作った。Personal CareやSupplemental Remote Personal Careをしない。 Jos曰く昨今の医療産業は複雑になり過ぎていて、他人を信用しないシステムになってしまっている。このために会計士や弁護士、コンサルタントなどの医療と関係のない人達がルールを策定するために増えてしまっている。医療を提供する人は減っている。これではダメだ。

FAVIというフランスの自動車部品会社も会社全体を20-30の小さいチームに分けてそれぞれに独立性を持たせる事で成功した。

Homo ludens. オランダのJohan Huizingaが1938年に提唱した、人間の文化は遊びによって形作られるという考え。

ジャンクパーツが沢山ある公園は子供が遊ぶのに最適。子どもは自分で遊びを見つけられる。大きな怪我をした子も居なかった。

Agoraという学校では教室の壁や学年がない。学生一人一人が自分の勉強スケジュールを立てて自分が学びたい物を学ぶ。ここではイジメがない。イジメは監獄や老人ホームのような閉鎖的で皆が同じ事を時間割に従ってすrpるような環境で起こる。Agoraの自由さはその対極である。Agoraではコーチがいて、生徒は週1回面談する。コーチは彼らが知りたい題目(韓国語やプログラミング)を知っているとは限らない。

私たちはその自由を子どもに与える勇気があるか?

Julio Chavezという政治家は、勝ったら権力を人々に渡す、という公約を掲げてVenezueraのとある街の選挙に勝った。

Participatory budgeting

Porto Alegre市民が積極的に市の予算編成にかかわる事。これをやることによって行政への信頼が増した。道路などのインフラ、教育、医療にお金が使われるようになった。特に貧しい地区。('Improving Social Well-being through new democratic institutions" by Michael Touchton et. al.)

“Tragedy of the Commons” by Garrett Hardin. 人は自分の利になることばかりしてしまい、全体として悪い方向に向いてしまう。放牧する人が土地を枯らしてしまうという話。

アラスカ州原油で手に入れたお金を州民に配布する。お酒に消えるのではと危惧する人もいたが、多くの人々は教育などに使っているそう。

Part 5 The other cheek

強盗にあったときにその子頭止めて一緒にディナーを食べた人の話。相手がこちらに外を与えた時にやり返さない姿勢を取る事はできるか?

Drinking tea with terrorists

ノルウェーのHaiden prisonはとてもいい住環境があるnon-complementary prisonの例。刃物も使えるし、看守は囚人とご飯を食べる。着ているものではどちらか区別できない。再犯率が50%低い。

一人当たりの料金は高いが再犯率の少なさや警察への負担が軽い、被害が防がれるのでトータルで見たら効率的。

New YorkのBroken Window theoryは有名だが、実は学術的根拠はない。New Yorkはそれに従って厳しく人々を取り締まり犯罪率が減少した事を誇ったが、他の地域でも犯罪は下がっている時代だった。厳しい取り締まりに会ったのは有色人種ばかりだった。

Newarkでは2014に市長が警察の意識改革を始めた。人々を人間として扱う。コミュニティを知る警察官を育てる方法を始めた。

デンマークのAarhusという町ではシリアに向かってテロリストに加わろうとする人が居たら罰するのではなく、お茶を出して家族を呼んでその人を大切だと思っている人がいる事を知らせてあげる取り組みをした。警官がモスクに通って交友を増やすこともした。署長曰く

What’s easy is to pass through new laws. Harder is to go through a real process with individuals: a panel of experts, counseling, healthcare, assistance getting back into education, with employment, maybe accommodation. We don’t do this out of political conviction. We do it because we think it works

North Dacota州の刑務所はノルウェーから学んで改善した。まずは細かいルール(シャツを入れないと罰など)を廃止。看守は囚人と1日に2回言葉を交わさないといけない、など。これにより刑務所内での自殺未遂や暴れる人の問題がとねも減った。

The best remedy for hate, injustice and prejudice

Gordon AllportによるContact hypothesis. 人は学校や教会で頻繁に会えばお互いを人間だと認識して寛容になれる。南アフリカアパルトヘイトは解決策ではなかった。人々を隔離させ、よりお互いの恐怖心を増す原因であった。Constand and Abraham Viljoenはアパルトヘイト廃止後の選挙でマンデラを支える立役者となった。マンデラはテロリストとして27年間服役している中で敵の事を知り、言語を学んだ。出所後に政治家となり、Constandとの対話で内戦を防いだ。

Contactはすぐには効かない。ゆっくり長い目で関係を育む。

知らない人とやり取りするのはスキルだ。Mark Twain曰く

Travel is fatal to prejudice, bigotry, and narrow-mindedness

Epilogue: Ten Rules to Live By

When in doubt, assume the best

Maria Konnikova曰く騙されてもいいから人を信じなさい、と。もしこれまで騙された事がないならば、人を疑りすぎてるかもしれない。

Think in win-win scenarios

良い事をすると気分がいい。物乞いにお金をあげるのは自分の気分が良くなるため。

Ask more questions

Temper your empathy, train your compassion

Empathyは相手の感じている辛さを感じようとする事。疲れるし辛い。Compassionは辛い境遇にある人達を温かい心で思う事。暗闇が怖い子供がいたら一緒に歩くのがempathy。大丈夫だと諭すのがcompassion。

Try to understand the other, even if you don’t get where they’re coming from

他の人の考え方(rational)を理解するのはその人になりきらなくてもできるスキルである。人種差別主義者の考えを理解するのに差別主義者になる必要はない。

Love your own as others love their own

遠くにいる知らない人たちにも大切な家族がいる。

Avoid the news

ニュースとSNSは世の中の見方を悪い方に変えてしまう。生身の人に会いましょう。

Don’t be ashamed to do good

心から良い事をした事を「ちょっと忙しくしたかったから」などと言い訳するのは良くないこれは人は根は悪いというVeneer Theoryが根底にある考え方。

善い事をしている人を見ると、ひとは自分も善い事をしたくなる。

Be realistic

これまでrealisticとは皮肉的に人の悪い面ばかり強調するような考え方だった。しかしこの本で紹介したように人間が本質的に善い事をする動物というのが新しい現実である。

巻末に載っていた著者のTED動画

www.ted.com